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個人的 BOOK OF THE YEAR 2025(東京ヒゴロ/むらさきのスカートの女/口訳 古事記/風のささやきを聴け)

   

「The Game Awards 2024」が発表されたので、「個人的 BOOK OF THE YEAR」を開催する。これは2024年に読んだ本の中から優れた…と書くと語弊があるから“個人的におもしろかった”“人に読んでごほしいと思った”本を選出する大会(?)である。

…第一回なのでまだ詳細は詰めきれていないが、とにかく開催する。いいと思った本について書かせてくれー。

東京ヒゴロ/松本大洋

大人の漫画。たぶん子どものころに出会っても、ここまで「いい!」とは感じなかっただろう。主人公のおじさんを中心に、なんとも滋味深い物語が展開される。地味なんだけど、それがいいんだ。

松本先生のあのクセのあるタッチで綿密に、ときに大胆に描かれる世界。3冊、あっという間に読み終えてしまった。漫画をちゃんと読むのは約20年ぶりだったのだが、それがこの作品でよかった。

僕自身、漫画を描いていた時期があったからこんなに深く刺さるのかもしれない。それとも好きなものを、注目されもしないのに今も何年も作り続けているからかもしれない。

これを読んで以降、僕はまた漫画を読むようになった。学生時代に読んでいた「少年ジャンプ」にも再び手を出すようになった(まだ掲載作品すべてを読むほどの漫画筋は戻っていないが…)。映画「ルックバック」も観に行った。ちょっと前の自分からは考えられない。

大手出版社を早期退職した漫画編集者の塩澤。
会社員を辞めた男は、今、漫画に何を思うのか。
仕事か、表現か、それとも友情か。
人生五十年を越えても、憂い、惑い、彷徨う男たちにおくる鎮魂歌。
東京の空の下、時代の風に吹かれて、漫画が芽吹く。


【引用】『東京ヒゴロ』 松本大洋 | ビッグコミックBROS.NET(ビッグコミックブロス)|小学館|https://bigcomicbros.net/work/6440/

むらさきのスカートの女/今村夏子

主人公の観察対象は他人だと思っていたが、それは自分だったのかもしれない?目の前の光景と主人公の語りで淡々と進む不思議な物語。

公園、職場、通勤バス。出てくる景色が日常的なものだけに、その不思議さ、というか不気味さのようなものが際立つ。読んでいるうちに、これは現実に起こった出来事なのかもしれない、と勘違いしてしまうほど。

芥川賞受賞作品だが、手に取ったきっかけはそれじゃなくて、オードリーの若林さんがこの作品についてテレビで話していたから。小説はあまり得意ではないのだが、これは読んでいてしんどさがなく最後まで読めた。

正直、この物語をちゃんと理解できたとは思っていない。でも、読んだあとに「おもしろかった」と思えてしまったのだからたぶんそれでいい。

むらさきのスカートの女は、むらさきのスカートの女でもあり、違うカーティガンの女でもあり、作者かもしれないし読者かもしれないし。深淵を覗いているとき、深淵もまたこちらを覗いているのだ、じゃないけど。ミイラ取りがミイラになる。これも違うか。

ちょっとでも気になっていたなら、ぜひ手にとって実際に読んでみてほしい。短編作品なのでサクッと読める。小説があまり得意ではない僕でも読めたので、たぶん読みやすいはず。内容(物語の核心・真実)はわかりにくいかもしれないけれど。

「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性が気になって仕方のない〈わたし〉は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で彼女が働きだすよう誘導し……。ベストセラーとなった芥川賞受賞作。文庫化にあたって各紙誌に執筆した芥川賞受賞記念エッセイを全て収録。

【引用】朝日新聞出版 最新刊行物:文庫:むらさきのスカートの女|https://publications.asahi.com/product/23576.html

口訳 古事記/町田 康

ずっと気になっていた「古事記」に手を出すきっかけとなった一冊。日本神話が関西弁で、町田康節で、軽妙なやり取りでもって展開していく。これはとんでもない作品だ。

右翼的な言い方に見えるかもしれないけど、日本人なら絶対に読んだほうがいい。

あんなに敷居が高いと感じていたものが、ここまで自分でも気軽に手が届く高さにまで降りてくるのか。いまや僕の中で日本神話の神様たちは関西弁でしかしゃべらない。良くも悪くも。

それでも冒頭にある、次々に神様が生まれてくるシーンはしんどい。「そのシーンはしんどいぞ」と聞いてはいたけど、たしかにしんどかった。でもその先に超おもしろいものがある。

この作品をきっかけに僕はもうちょっとオカタイ古事記本にも手を出した。少し読んで「おお…」と思いはしたが、古事記のおおまかストーリーは関西弁で頭に入っているから、それと照らし合わせながら読めばなんてことはない。難易度がガクッと下がる。

個人的には、「日本書紀」もこのノリでやってもらえたらとても嬉しい。なぜなら「日本書紀」もハードル高いなーと思って手を出せないままだからである。

アナーキーな神々と英雄たちが繰り広げる、〈世界の始まり〉の物語。
前代未聞のおもしろさ!!日本神話が画期的な口語訳で生まれ変わる!町田康の新たな代表作。

「汝(われ)、行って、玉取ってきたれや」「ほな、行ってきますわ」
イザナキとイザナミによる「国生み」と黄泉国行、日の神アマテラスの「天の岩屋」ひきこもりと追放された乱暴者スサノオのヤマタノオロチ退治、何度も殺されては甦ったオオクニヌシの国作り、父に疎まれた英雄ヤマトタケルの冒険と死、帝位をめぐる争い、女たちの決断、滅びゆく者たち――。
奔放なる愛と野望、裏切りと謀略にみちた日本最古のドラマが、破天荒な超絶文体で現代に降臨する!

【引用】『口訳 古事記』(町田 康)|講談社BOOK倶楽部|https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000375050

風のささやきを聴け 今を生きるインディアンたちのスピリット/編集 チーワ・ジェームズ、訳 ハーディング祥子

ネイティブ・アメリカンの著者が、アメリカとカナダに住むネイティブ・アメリカンから聞いた話をまとめた書籍。2000年に発行されたもので、Amazonで偶然見かけて購入した。書店で見かけたことはない。こんな本があったのか、と。

“ネイティブ・アメリカンの本”と聞くと、そこに書かれているのはスピリチュアル的な、特別な、神聖な、勇敢な戦士や偉大なメディスンマンの話か書かれていると思うかもしれない。しかし、この本に記録されているのは、現代で普通に暮らしている人たちの声だ。たまたまネイティブ・アメリカンを祖先に持った、普通の人たちの言葉だ。

彼らが祖父母や両親から聞いた話や、幼少期の体験談を語っている。いいことも悪いこともある。差別もドラッグもある。伝統的な生活をしていない人たちもいる。だけどそこには目には見えない、ネイティブ・アメリカンの伝統が確実に生きている。

英雄が主役の本ではあまり書かれないであろう“現代のリアル”がここにある。インタビューの合間にネイティブ・アメリカンの格言(こちらは首長など偉大なネイティブ・アメリカンの言葉)も書かれており、それが“普通の人”たちのインタビューと違うように見えて同じようなことを言っていたり。

一つ一つのインタビューは大して長くないので、思い出したときに気になったところだけを読む、という読み方もおすすめ。

かつては山野にこだましていたアメリカ・インディアンの声も、バッファローの群れが平原から消えてゆくとともにかすかな「ささやき」に変わってしまった。しかし、その声が伝える時を超えた教えの数々は、今なおインディアンの心の中に生きており、耳を傾けるすべての人たちに、永遠にささやきかける。

【引用】風のささやきを聴け: 今を生きるインディアンたちのスピリット – チーワジェームズ – Google ブックス|https://x.gd/SGR5y

 

いや〜、本って、本当にいいものですね(BA-90)

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