※勢い任せ、吐き出すように書いたテキストです
初めて存在を知ったのは、Bob Dylan経由でたどり着いたThe Traveling Wilburysで、だった。もじゃもじゃ頭のおじさんやサングラスをかけた紳士なおじさんに混じってそこにいた、金髪サラサラヘアーのにいちゃん。にいちゃんとは言っても年齢はおじさん(当時30代後半)。でも、ほかのメンバーに比べれば若い。
失礼を承知で書くと、決して「かっこいい!」と手放しで褒められるような容姿ではない。目つき、声、なんとなくひねくれているような感じもある。レーディング風景などを収めたCD付属のDVDを見ると、悪い人ではないことはうかがえる。DylanやGeorgeらにも可愛がられている後輩って感じ。
いったい彼は何者なんだろう。第一印象はそんな感じ。
しばらくして、中古CDショップに行った際にふと彼のことを思い出した。「T」のコーナーを探してみるも見つからない。諦めて掘り出し物はないかと100円セールコーナーを覗くと、彼のソロ名義のアルバム『Full Moon Fever』を見つけた。問答無用で購入。
Bob Dylanを初めて聞いたときと同じで、最初からスッと受け入れられたわけではない。歌い方にクセがあって、最初は多少の抵抗があった。が、しばらく聞いているとそのクセが心地よくなり、よく聞けばメロディもポップだし、ギターのフレーズもかっこいいし、いつの間にかハマっていく。この辺もDylanと同じ。そうして彼のバンド名義のアルバムにも手を出し始める。
DanelectroのLONGHORN BASSを買うきっかけは彼だった。Traveling Wilburysの楽曲のMVで、彼がLONGHORN BASSを弾いていた。「変な形のベースだ」と思い楽器屋へ探しに行くも同じものは見当たらない。名称がわからないから店員に聞きようもないし、泣き寝入りに近い形で諦めていた。
その数年後、LONGHORN BASSのことを忘れかけていたころ。普段は行かない楽器屋で偶然にもLONGHORN BASSを発見してしまった。しかし店には1本しかなく、そこにあったのは売り物ではないとのこと。ここで初めてこの楽器のメーカーと名前を知り、値段を知った。このころは韓国で製造されていたこともあってそんなに高くなかった。思い切ってメーカー取り寄せで注文した。
思えば、SGが欲しくなったのも彼が弾いているのを見てからだ。それまではAngus Youngのイメージで、自分は手を出さないタイプのギターだとばかり思っていた。でも、彼が使っているのを見て、つい欲しいギターのリストに追加されてしまった。
CDをすべて持っている、というわけではない。でも、だからといって単に好きなアーティストの一人、というわけでもない。熱狂的ファンとは言えないかもしれない。けれど、好きなアーティストというには軽すぎる。それくらい自分に対して多大なる影響を与えてくれたミュージシャン。
10年前に発売されたライブDVDを見返してみると、このころはまだ髭おじさんではない。アルバム『Mojo』ではすでに髭おじさんだ。
亡くなる一週間前、彼はいつも通りにステージをこなしていたらしい(Youtubeに最後のステージとなったライブの映像がいくつもアップされている)。
でも、そのときは突然やってくる。
自分のまわりには彼のことが好き、もしくは好んで聞いている、あるいは知っている人すらもほとんどいない。だから彼の訃報を知ったときはこの感情を誰にも言うことができず(共感してくれる人がいないという意味)、仕事中にもかかわらず彼との出会いの1枚でもある『Full Moon Fever』を聞き直した。いまとなってはメロディはもちろん、声や歌い方もいいと思える。むしろたまらない。
Traveling WilberrysはGeorgeの夢でありながら、彼にとってもまた夢心地な日々であり活動だったと思う。
突然すぎた。数日ほど引きずって、今はもう大丈夫。ぽっかり穴を受け入れられる。検索して、彼に関するコラムやインタビューやブログやいろいろなテキストを改めて読んだりもした。少し落ち着いた。
今年はTom Petty and the Heartbreakersの40周年記念イヤー。まだまだこれから、だからライブもガンガンやっていたし、もしかするとそんななかで新曲だって生まれていた(あるいは生まれかけていた)んじゃないだろうか。
もうTom Petty and the Heartbreakersの新曲は聴けないと思うと少し寂しい。でも、残された音楽はいつだって聴ける。
辺境の日曜音楽家。フトアゴとレオパ。鈴木絢音さん推し。※ゲーム実況はやっていません|https://lit.link/lrfr