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寿々喜は再び磐津神社の境内に足を踏み入れた。先日訪れたときよりも参拝客が多く、特に若い女性の姿が目立つ。皆、スマホを手に御朱印を撮影したり、「ご利益ありますように！」と願いを込めている。
「……想像以上にバズってんな」
そんな光景を横目に、寿々喜は社務所に向かった。前回と違い、今回は事前にアポを取っているので、ゆっくりと話を聞けるはずだ。
「あ、寿々喜さんですか？先日は不在にしていてすみませんねえ。今日はよろしくお願いします」
「宮司さん、はじめまして。ライターの寿々喜と申します。今日はお時間作っていただいてありがとうございます」
応接間に移動してから、寿々喜は気になっていたことを質問した。
「ここ数日で御朱印の噂がますます広がったみたいですね。正直なところ、神社としてはこの状況、どう見ているんですか？」
宮司は少し考え込み、静かに答えた。
「話題になって参拝者が増えるのはありがたいことです。ただ……神社というのは、本来、人々の心を整える場所。願掛けや運試しの場ではありません。本来の意義を忘れずにいてほしい、というのが正直な気持ちですね」
寿々喜はなるほど、と頷いた。
「確かに、今は恋愛運の噂ばかり先行してますもんね。でも、そもそもこの御朱印のデザインには、どんな意図があったんですか？」
宮司はふっと微笑み、「少々お待ちください」と言うと、社務所の奥へ消えていった。数分後、戻ってきた宮司の手には、一枚のプリントがあった。そこには、かすれた模様が彫られた古い木札の写真が写っていた。
「これは、当神社に伝わる古い木札の写真です。重要文化財になっているので、実物はお見せできませんが……この模様に見覚えはありませんか？」
寿々喜はプリントを覗き込み、目を凝らす。うねるような曲線が刻まれている。図書館の本で見た木札はこれで間違いない。
「……あ。そういえば、御朱印と似てますね」
「はい。磐津神社には、古くから『磐座』にまつわる伝承があります。この町のシンボルである磐座は、天から降りた神々の乗り物、つまり『磐船』とも言われています。その磐座を囲むように流れる水――それをかたどったのが、今回の御朱印のデザインです」
「水の流れ……まるで龍がうねっているように見えるのは、偶然ですか？」
「偶然ではありませんよ。磐座には、かつて水神、つまり龍神が宿ると信じられていました。水は流れ、時に人と人をつなぐ。それが『縁』として解釈されたのかもしれません」
確かに、水の流れは縁を結ぶ象徴として語られることがある。だが、それが「恋愛運アップ」という形で広まるとは、神社側も予想していなかったのだろう。
「つまり、この御朱印は、神社の歴史と自然の流れを表したものであって、恋愛成就のために作られたものじゃない、と」
「ええ。実際に神社としては恋愛成就のご利益は公式にはうたっていません。しかし、人々がそこにどんな意味を見出すかは自由です。もし、この御朱印が誰かの背中を押すものになるのなら、それはそれで良いのかもしれません」
宮司の言葉に、寿々喜は軽く笑った。
「なるほど、真相は意外とシンプルだった。でも、こういう話があるからこそ、町の歴史って面白いんですよね」
宮司も微笑みを返す。
「どうでしょう。？おもしろい記事になりますか？」
「そうですね。せっかくなので、ちゃんと神社の歴史、『磐座』にまつわる伝承から説明する形で記事にまとめるべきかな、と思いました。単なる噂話じゃなくて、町の魅力として伝えたいですから」
神社をあとにした寿々喜は、御朱印を巡る騒動の裏に、町の歴史が息づいていることを改めて実感していた。
（さて、この話をどうまとめるか……）
風に揺れる木々の音を聞きながら、寿々喜は軽く背伸びをした。
※執筆：ChatGPT／画像：Microsoft Designer
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