【楽器】Recording King「Carson j Robison Model-K」(1939)

雑記

2年前の5月、Recording Kingというメーカーのアコースティックギターを某i楽器にて購入しました。

といっても、サウンドハウスで購入できる中国製のRecording Kingではありません。
Gibson社でOEM生産されていた時代のRecording Kingのギターです。

スペック

▲Recording King「Carson j Robison Model-K」

購入したギターのスペックは以下の通り。

  • ブランド/Recording King
  • モデル/Carson j Robison Model-K
  • シリアル/EW-358
  • トップ/アディロンダックスプルース
  • サイド・バック/ホンジュラスマホガニー
  • 指板/ハカランダ
  • そのほか/スキャロップXブレーシングにモディファイ。ネックにハイ落ちあり、ボディクラックリペア跡複数あり、塗装タッチアップ跡あり、フレット、ナット、サドル交換歴あり
David Sheppardさんによって大規模リペアが施された、という2012年9月26日付けのラベルがボディ内に貼られています。
このリペア時にスキャロップXブレーシングへと変更されているようです。
こんな状態のギターがどういう経緯でアメリカからはるばる日本にやってくることになったのか、少し気になるところ…。

▲リペアしましたよラベル

なお、2017年3月更新の某I楽器のブログでこの個体が紹介されています。
(材については自分には見る目がないので、某I楽器のブログを参考にしました)
 
余談。
某I楽器のブログには2017年時点の販売価格が約27万と書かれているのですが、購入時の価格はここから約8万高くなっていました。
6年経過で8万値上がり…いやあ、ビンテージビジネスですね〜。

ネットを使って正体を探る

ブランドとシリアルナンバーについて

▲ヘッドの文字はカッスカス。王冠はほぼ見えない

「Recording King」というブランド名は、アメリカの通販会社「Montgomery Wards」が1929年〜1943年に使用していたもので、ギブソン以外にもグレッチやリーガルなどが発注を受けていたようですが、1938年以降はギブソンのみが生産していたみたいです。
通販会社ということなんで、Montgomery Wardsは現在でいうAmazonみたいな存在だったんでしょうね。

▲ペグはクルーソンの3連タイプに交換済み。ヘッド裏の中央をよーく見ると「BLACKIE RAY AND」という文字が雑に手彫りされている

Recording Kingのシリアルについては海外の掲示板サイトにこんな情報を見つけました。
Correct, Steve, E is 1939 and W is Ward.
 
スティーブさん、正解です。Eは1939、WはWardです。
 
※Google Cromeで翻訳
【引用】1939 Gibson-made Recording King Ray Whitley serial number and date stamp – The Unofficial Martin Guitar Forum
どこの国にも親切な有識者がいるんだなあ。
ということで、我が家にやってきた個体は1939年製ということがわかりました。
 
ちなみに、この掲示板サイトにはRecording Kingの「Ray Whitely 1028」というギターを、David Sheppardさんに修理依頼しているという方が書き込みをしていました!
This thread got me longing for my soon to be returned  RK – Ray Whitely 1028.  It’s been with David Sheppard for a bit for some work.  The serial # is EW-1665, which info in this thread indicates is a 1939 production date, is that correct?  The brace marking inside says Apr 1940.
 
このスレッドを見て、もうすぐ返却されるRK – Ray Whitely 1028が恋しくなりました。David Sheppardに修理のため預けていたものです。シリアルナンバーはEW-1665で、このスレッドの情報によると1939年製造とのことですが、本当でしょうか?内側のブレースの刻印には1940年4月とあります。
 
※Google Cromeで翻訳
【引用】1939 Gibson-made Recording King Ray Whitley serial number and date stamp – The Unofficial Martin Guitar Forum

モデルについて

▲L-00タイプ(写真左)とJ-185タイプ(写真右)の「Recording King Carson j Robison Model-K」

次に「Recording King Carson j Robison Model-K」という型について調べたのですが、どうやら「L-00タイプ」と「J-185タイプ」の2種が存在しているようで。
同じ名前で全然違うギターを出す、ってテキトー過ぎないか…?
 
今回は「L-00タイプ」の情報を求めているわけですが、調べて出てくる「MODEL-K(L-00タイプ)」は14フレットジョイントの個体のものがほとんど。
いろんなワードで検索して、なんとか12フレットジョイントの個体を紹介しているサイトを見つけました。
This interesting guitar was an offering from the 1937-9 Montgomery Ward catalogs, built by Gibson for the mail order house’s “Recording King” brand. It was named for long-time Gibson endorser, singing cowboy, and radio entertainer Carson Robison, who lent his moniker to a number of different fretted instruments in the ’30s.
 
この興味深いギターは、1939年のモンゴメリー・ワーズ・カタログに掲載されていたもので、ギブソン社が通信販売会社の「レコーディング・キング」ブランド向けに製作したものです。このギターは、長年ギブソンのエンドースを務め、歌うカウボーイ、そしてラジオ・エンターテイナーとして活躍したカーソン・ロビソンにちなんで名付けられました。彼は1930年代に様々なフレット付き楽器にその名を冠していました。
(中略)
 
This was originally built as a Hawaiian style flat-top, with the typical 12-fret neck joint used by Gibson only on steel guitars by this time. It is now set up for standard play.
 
このギターは元々ハワイアンスタイルのフラットトップとして製作され、当時ギブソン社がスチールギターにのみ採用していた典型的な12フレットのネックジョイントを備えています(現在は標準的な演奏用にセットアップされています)。
 
※Google Cromeで翻訳
【引用】Recording King Carson Robison Model K Flat Top Acoustic Guitar, made by Gibson (1939) | RetroFret
このサイトによると、12フレットジョイントはハワイアンギター用のギターに採用されていたスペックのようです。
それを普通のギターと同じように弾けるようセットアップされたもの、ということならば母数が少なそうですし、情報がなかなか出てこないことにも納得。
 
※Google Cromeで翻訳
【引用】Recording King Carson Robison Model K Flat Top Acoustic Guitar, made by Gibson (1939) | RetroFret
9.25ドルということは、現在のレートだと…1400円くらいってこと!?
エントリーモデルとはいえ、ギターってそんなに安いものだったのかと驚愕です。
長い年月の経過で貴重価値が高まったから、というのもあるのでしょうが、とてもそんな激安ギターとは思えないすばらしい鳴りなんですよ!!

出会い

▲歴史を感じるファイヤーストライプ ピックガード

このギターのバックボーンがある程度わかったところで、ついでに出会いについても読んでいってくださいよ。
それは時間つぶしのために何気なく立ち寄った某I楽器でのこと…。
店の入口から死角にあたる壁に、このギターはぶら下げられていました。
貫禄のありすぎるボロボロのルックスながら、ちょうど小ぶりなギターに興味が向いていた時期ということで気になってしまい、思い切って試奏してみたら見事にノックアウト!
馬鹿みたいにぶっとい三角ネックに衝撃を受けつつも、ふくよかなサウンドにすっかり魅了されてしまいました。

▲ピックガードに引っ張られてか、サウンドホール付近のトップが少し変形している

しかしお値段がなかなか、こう、衝動買いするには大きすぎる金額でして…。
対応いただいた店員さんからも「同じ額出せばいいギターを新品で買えるからおすすめはしない」と言われたのですが、悩みに悩んで結局お迎えすることに。
惚れたら負け、という言葉を考えた人は天才。

お迎えしたその日に…

▲ボディ内のリペアの形跡

試奏していた時点ですでにペグにガタがきていることはわかっていました。
店員さんも「近々リペアの必要があるでしょうね〜」的なことを言っていました。
だけどさあ、お迎えした当日、自宅でチューニング中にペグが割れるなんて誰が想像できるんですかねえ…。
店頭での試奏時は、まだしばらくは耐えてくれそうな雰囲気出してたじゃん!

▲トップにもブリッジにも傷多数

ということで、購入したその日に近所のリペアショップに電話して即入院。
このルックスに合いそうなペグを探した結果、まさかの輸入待ちが発生し、弾けるようになったのは購入してから4か月後という…。
ビンテージを所有するということはこういうことだ、と早々に勉強させられたのでした。

手間はかかるが最高

▲サドルは余裕なし(ブリッジピンは交換済み、材は失念)

お年を召した個体ということで、基本的には1音もしくは1音半下げたチューニングで弾いています。
チューニングを落とすことでよりふくよかな音になり(体感)、音を出しているだけで楽しい!
弾くたびに「ギターとはなんぞや」を大先輩から教わっているような感覚です。
極太の三角ネックにもだいぶ慣れて、「気づいたら数時間弾き続けてた…」も体験済み。笑

▲”ぽっこりお腹”はあまり気にならない

これまで20本近くギターを所有してきましたが、本機が圧倒的に年代物。
正直、今後も何らかのリペアが必要な出来事は起こるでしょう。
手間はかかるし気も使いますが、それに見合うだけの価値あるギターだと感じています。
 
とりあえず、このギターが“ビンテージ”から“アンティーク”になる2039年を、自分自身も健康で迎えたいですね〜。

参考サイト

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